ディスタンクシオン④ブルデュー

本を読む女性 100分de名著
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第四回 人生の社会学

第四回 人生の社会学
指南役    岸政彦

NHKオンデマンド


あのころは 選択肢がなかった。

自分があの人だったらどうしょうと、
徹底的に考えるのが社会学者の仕事。

ブルデューを読む意味

社会学者の視線を持って欲しい(プリーズ)

社会構造の中でどうやって分断されていくか?

現実の社会的分割は 社会界にたいする人々の見かたを
組織してゆく分割原理となる。

そして客観的境界は境界感覚に、すなわちこれらの客観的境界を
実際に経験することを通して獲得された、
あらかじめの実践的に 客観的境界を見越すことのできる感覚、

自分がそこから排除されているもの(財、人間、場所など)から
前もって自らを排除するようにしむける 
自分の場所の感覚になる。

社会構造の中で引き裂かれ我々は分断されてしまう。

どうやって人が選別されていくか?

我々は内面を分断され、感覚の中に境界線が引かれてしまうのだと、
ブルデューは指摘している。

自分と他者とを区別する境界を、自分の中の自然な感覚として身に着けてしまう。
この感覚は秩序関係への賛同へ転嫁する形で、
社会が恣意的に与えた秩序を自然なこととして受け取ってしまう。

したがって彼らはまず 分布構造が自分に割り当てているものを
自らに割り当て、自分に拒否されているものを拒否し、
自分に与えられているものだけで満足し、
自分の抱く期待を 自分に与えられている機会に釣り合わせ、

既成秩序が彼らを定義している通りに 自己を規定し、
自分自身にたいして下す決定のうちに
社会構造が彼らに対して下している 決定を再現し、

要するに一言でいえば結局のところ 
彼らに帰するものに身をゆだね、

自らのあるべき姿、すなわち「謙虚」で「慎まし」くて
「目立たない」存在であることを 受け入れるのである。

社会環境に合わせて自らを当てはめて行くようになっていく。
私たちは恣意的に秩序を受け入れている。

差異・格差・分断は必ず自然化される。なぜなら、そうすることによって競争のシステム自体は安泰に維持できるから。

その人にはその人の理由がある他者の合理性を考える。

今、ハタと気が付いたけど死刑制度とかもそうだな…。
先日の岸田内閣古川法務大臣が就任会見で、「廃止するのは適当ではない」との認識を示していたけど、
自分もそれは自然なことだと感じて聞き流してしまっていた。
しかし元はと言えば、そこに何かしらの諸問題があるから死刑廃止論がアドボカシーされていたのだ。

ただ、常識的に考えて、民意により選ばれた大臣に異を唱えても仕方がないく、
それでも、正統な手段で異を唱えるならば、自分が国会議員に立候補して民意に訴えるしかない。
それ以前に自分も含めた日本人の大多数(99.999%)は死刑になる様な犯罪をする予定が無いので、死刑制度が有っても無くてもどうでも良く思っていて興味ない国民が大半ではないかしら?

法曹界でも、死刑制度については賛成派、反対派意見が割れているそうだ。
賛成派が若干多いと(あてにならない)ネットで読んだ。
理由も幾つかあり…だって「ポジションのズレがその人のハビトゥスを形作っている」のだからいっぱいある。
刑罰についての考え方に、目的刑論、応報刑論とか難しいのが色々あるのですが、

とにかく、自らの過ちを認めて、反省しない野郎はどこまでも反省しないという事らしいです。

それで、死刑制度があると最後の最期、死刑執行の直前に恐怖のあまりハタと我に返ってその一瞬だけでも後悔するのではないか?せめてその一瞬だけでも反省させたいよね!…と言うことらしいです。本当かなァァ??
それで、実際に死刑囚の最期はどうかというと、、、
…………オシッコぶっちびって往生際悪く絶叫したり暴れたりする人って多いみたい。。。
どこか他人事のように自分を見つめるようにして恐怖の感覚を麻痺させて精神崩壊を免れていたのでしょうか、

一方、日本には死刑制度が未だ残っていて野蛮だと、諸外国とりわけEUからのバッシングを強く受けています。
西欧では
人は根っからの悪人はいないという、その根底にキリスト教に根差した共通の道徳観を持っています。

要するに貿易自由化に向けた経済連携協定とかトレーディングルールの締結交渉の場に「人権条項」を設けるゾ!…みたいな、経済界ではあらぬ疑い、あらぬ弱みに付け込まれる悪材料になっているのですね。

EUにもやっぱり牛肉オレンジを輸出したいアメリカですが、アメリカもまた死刑制度を残している国です。ユニセフや世界銀行にお金だして世界の警察までやってる、ましてや先進国の一員なのに「アメリカ国内で人権侵害や民主主義に反する事態が起きた場合、EUは即座に取引を停止できる」とか一体何様のつもりだ!一方的なルールを勝手に盛り込むな!そもそも死刑制度あるから関税ドカン!とか言いがかりにも程があるだろう!
と怒り心頭だったりします。そしてそれは実際に言い掛かりなのは百も承知で言ってるのです…。
フランス・ドイツみたいに強い国は平気でも、EUには国際競争力に劣る脆弱な国いっぱいあるので仕方がなく。

他の理由もあるだろうが、死刑制度は有るけど死刑執行はしない。という変な状態がしばらく続いていました。

どうあれ犯罪と貧困には相関関係があると思ってて、実際に服役者は経済的に困窮した人や低学歴が多いし……。

岸 先生の推薦本

ヤンキーと地元 (単行本) 単行本 – 2019/3/23
打越 正行  (著)
ここにあるのは「優しい沖縄」ではなく、地元社会の過酷な掟である。
パシリから始まり、10年という歳月をかけた、驚愕のエスノグラフィー

地元を生きる―沖縄的共同性の社会学 単行本 – 2020/10/6
岸 政彦  (著), 打越 正行  (著), 上原 健太郎 (著), 上間 陽子 (著)
階層格差という現実のなかで生きられる沖縄的共同性──。膨大なフィールドワークから浮かび上がる…… さまざまな職業の人びとの「沖縄の人生」。

世界の悲惨 I 単行本 – 2019/12/25
ピエール・ブルデュー (著, 編集), 櫻本 陽一 (監修, 翻訳), 荒井 文雄 (監修, 翻訳)
待望のブルデュー“主著”、ついに完訳!社会的分断の激化を実相を浮き彫りにし、現代における国家の役割を再焦点化したベストセラー。

他者の合理性を考える

小学校のころ親は 勉強を見れくれたかな?

いいえ。おやじは 字が読めないし書けない。字が書けるのはおふくろだけ。
何とか書けるというくらい。兄貴たちが少し……。
俺らの団地では 学校に行く奴は一人もいなかった。

前に、団地のアラブ人が団地の中で サツの奴らに殴られたんですけど、
フランス人が一人、助けようとしたんです。
「おい、こんなの、おかしいじゃないか。そんな権利は無いだろう」って言って。
そしたら、おまわりは そいつを車に押し込んで、署まで連行して、そいつもやっぱ殴られたんですよ。

何もかもうまくいかない。

最後になって、全部終わった今、何もかもうまくいかないってことに 気づかなくちゃならんのです……
あのころは選択肢がなかった。金持ちでも貧乏でも若者ならだれでも、フランス行きが道だった。
みんな移民してきたのは、フランスが楽園だと思ってたからだろう なんて人に言われると、
子ども扱いしてんのかって言いたくなるね!

フランスが楽園じゃないことぐらい 百も承知だった。
ある面では地獄だってこともわかっていた。

私らはすべてを否認した。自分自身、祖先、出身、宗教。
私らは棄教したんですよ。

ブルデューがある日読者の集いで話をしていた時、
一人の女性が立ち上がってこう言った。

あなたはこの本の中で、ある女性に話をきいていらっしゃいますが、それはまさに私自身の物語です。あなたがそれを語ってくださったおかげで、私は自分のことを理解できるようになりました。

ある人が、他人に受け入れられるというプロセスが、同時に自分自身を受け入れるプロセスになっている。それは何もその人を変えなければならないという事では無く、いかにして今あるような人間になったのかを理解すると言うこと。つまりそこにはある種の必然性があるのだという事を、彼ら自身に理解させる事である。

ブルデューは他者を理解する事で、自分自身を理解できるようになると言う。

他者を理解するという事は、その人のハビトゥス(傾向性)を把握する事である。

世の中の仕組みを考えるのが社会学の仕事。

ハビトゥスとは身体化された必然、
つまり道理にかなった慣習行動を生成し、
またこうして生み出された 習慣行動に意味を与えることのできる 
知覚を生成する性向へと 転換された必然であって、

それゆえ全般的であり かつ他の分野に転移可能な性向として、
現に所有されている 諸特性の修得条件に固有の必然性を、

直接に獲得されてきたものの 範囲を超えて、
体系的かつ普遍的に適用することが 
できるようにするものである。


ラベルを貼るのが権力である。故に、権力は
(分析し、単純化、類型化して例え大雑把にでも)理解したがる。

人生はシワに刻まれる。

他者のハビトゥス(傾向性)を把握する事とは、相手と同じ視座に立つ事と同じだと思うけど、
でもそれってその人がそれまで歩んできた人生を引き受ける事と同意のような気がする。
加えてそれは自分の度量を超える人物の
理解は不可能だとおもう…。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。(ものすごく大きいです…こんなに大きなの入らない…)

自分は相手の理解をできても、相手から自分は理解されないと言う様な不公平も十分考え得るだろうし、
軽々しく相手のハビトゥス(傾向性)を覗いてみたら

深淵を覗く時 深淵もまたあなたを覗いている。

キャー(≧∇≦)目が合ってしまった!この人サイコパスだったで御座る!みたいな事にもなりかねない…。
(最後部分はジョークですからね!)

20年12月07日放送
20年12月14日放送
20年12月28日放送

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